「 引越し vol 12.8/20 本音 」 朝から 目覚めが悪かった。 気持ちを切り替えよう!と鏡の前でパンパンッと顔を叩き 出動。 保育園に届けるように 実家に息子を預けてから出かけるのも 何だかお互い慣れてきた。 さあ今日も頑張ろう。みなさんが待っている。 1件を後にすると 携帯が鳴った。 ビクっとして画面を見ると 案の定、不動産屋の携帯番号だった。 「おはようございまあす♪昨日はどうも♪」・・・昨夜あれだけ凄み叫んだ後なのに相変わらず明るい出だし。 いえ・・こちらこそ・・と答える私の言葉を しかし又々途中で遮り 「会社の方と話がつきましてね、5日間分の家賃を日割りしてお返しする事になったんで、泉さんの都合の良い時間を教えてもらえますかね。持ってきますからっ。」 ばばばーっとまくし立てられた。相変わらず・・・。 すーっと深呼吸してから、今日は19:00前には自宅に戻る旨を伝えた。 「いっやあ〜それじゃあ私が無理ですねっ。明日はっ?」 明日はもっと遅くなると伝えると、っはーっ!とわかりやすい溜息が受話器から聞こえ 「一体いつならいいんですかねっ?こちらとしては会社から預かってるんで、早急にお渡ししたいんですよ」 全く困った客だよ と両手を上げてる様子が手に取るようにわかる。 だから、今夜なら居るんですけど・・・ と静かに繰り返すと それは聞こえなかったのか 「そいじゃあ、ご実家に届けときましょうかね?」 はあ・・・・・? 「だから・・・私は今夜なら・・・ 」 「じゃ〜ああ〜また連絡します!」ぶちっ つーつーつー・・・。 携帯を持ったまましばらくツーツーツーを聞いてしまった・・・。 っちっがぁうだろおおおおお〜〜??? ・・・電話の最中、少しでも早く届けたい=誠意 という図式を何とか成立させてみようと試みた。 が、あの調子では、実家のポストにでも投げ入れて行きかねないと確信した。 一瞬、もういいやー 何でもいいやー それで終わりにしちゃおっかーとも思った。 が、これは「住まい」の問題なのである。 これから先、毎日暮らしていく住まいの問題。持ち運びできる商品のように、気に入らなければ返品するというような訳にはいかない問題。私と息子とふたり大切な時間を過ごす場所の問題。 正直に言って 何度「返品」できたらいいかと真剣に思った。 しかし、それには余りにも 「引越し」てしまった。 ここまできて もう引き返せない・・。 だから いくらなんでも 「おらよっこれで気が済むんだろーよ!」とばかりにお金を投げつけられて納得いくわけには・・いかないでしょうやっぱり。そしてそんな事される筋合いは全く無いし。それに留守中に、実家に行かれて両親や息子に何かあっては不安である。 『何かあっては』・・?こんな考えが自分に湧いてきたことに苦笑する。 まあともかく 納得いっていないのに日々スッキリしないものを 喉の奥の骨のように ひっかかったまま暮らしていくのは それはとても健康的じゃないしね。 まったく・・・ 私ってただ 客なだけなのにね・・・。 やっぱり・・ と、ずっと心の奥でひっかかっていたことが浮かぶ。 やっぱり、女って なめられるもんなのかな。 おまけに母子家庭って わかってるから・・ 余計に なのかな。 まあ、、、 悲しいかな 現実世の中そんなもんなことがまだまだあるけれど・・・ 運転しながら、ある決心をする。 停めてから、不動産屋の事務所に電話をかけた。 こうなったら 直接社長と話そう。会社としてまるごと本当におかしな会社かどうか、確かめよう。 本当にまるごとおかしければ、その時はこれはもう、出る所に出なくてはいけないかもしれない。 余計な仕事をしょいこみ、どこでその為の時間を作成するのか思うだけで気が遠くなりそうだけど、それもこれも、まあ自分で決めてしまった契約だから仕方ないだろう・・。 電話口に出たのは、運良く、契約時に立ち会った営業の人だった。 契約時に何故か営業担当は居なくて この人と契約書を交わした。まるで 建築物の契約かいと思うほど 賃貸にはめずらしく丁寧に長く時間をかけた入念な契約の仕方だった。 なのでちょっとほっとする。ざざっとこれまでの経緯を話して 何とか社長に会いたい旨を伝える。 すると向こうは、言葉は丁寧だが 警戒心&うざったさ を漂わせながら 「それは それでいいですけどね・・・ もうお金は渡すと言う事で話はついている、と聞いているんですけどね」 と 言葉をにごす。 おそらく、あの営業担当から 私についての話を「彼サイドの言葉」でたっぷりと聞かされてるのだろう。まあそれはそうだろうね・・。ある意味わかりやすい・・。仕方ないだろうなあ・・・。おそらく、何かと言うとつけこむように「金払わないぞ」とか「金返せ」とか騒ぐ類の面倒な客・・とでも思われているのだろう。営業やっていただけに、営業側の客分類が手に取るようにわかるので、溜息がでる。 それでも一応 話半分でも聞いてくれればと 私サイドの言葉で 営業担当とのやりとりを伝える。契約時に約束だったブラインドも未だに入ってないことも伝える。淡々と事実のみを誇張を避けて(むしろ大部分をはしょる形になったが)言われた言葉の一部(全部はとても言い切れない)をそのまま伝えた。ひととおり、人の話を最後まで聞いてくれる人でほっとしながら。 「泉さんは、それで 社長と話さえすれば気が済むんですかね? これ以上 どうして欲しいということなんでしょうか?」 と聞かれる。 「私は 私は ただ ・・・・・」 ぐっと 詰まった。 どうして欲しいって? 引越ししてからこの濃いい〜10日間のことが 蛇口から溢れ出る砂のように どさどさと今 押し寄せてきた。 耳から砂がこぼれ落ちて来そうな気分になった。 私はただ・・・ 深呼吸して 口を開いた。 「せっかく お借りした部屋です。 あの新しい部屋に住む日を楽しみにしてきました。 だから私はただ・・・ 普通に 気持ちよく 暮らしたいだけなんです・・。」 そこまで言うと 涙がこぼれた。 そうなんだよ・・ ほんとにそうなんだよ・・ ただ 普通に暮らしたいだけなのに・・・ ほんとに全く 単に引越ししただけだって言うのに何だってこんな面倒な事になっちゃうんだろう。 すると電話の向こうで静かに聞いていた彼は あれ?と意外な言葉を聞いた後のようだったらしく しばらく沈黙した後 「それは・・・こちらとしても お貸しするからには住んで頂く方に気持ちよく住んで頂く事が一番です。わかりました。社長に確認して明日の時間を決めましょう」と、ようやく温かみを含んだ言葉を出してくれた。 はー・・・ ようやく 第一段階クリアだ・・・。 出張先の合間合間で明日の御予約先に電話をかける。 みなさんに事情を説明して少しずつ 前に後ろに時間をずらして頂き、なんとか不動産屋の社長と会う 時間をひねりだした。 その不動産会社は八街ではなく佐倉市にある。 地元ではない業者・・ だけに おこったことなのかもしれないなあ・・・。とみなさんにつぶやかれつつ、私もそうかもしれないなあと 内心つぶやいた。 |